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チャールズ・バベッジ

Charles Babbage

1791 - 1871

コンピュータの父:解析エンジンの設計者

2000/02/21 掲載

20世紀に復元されたバベッジのコンピュータ

チャールズ・バベッジは永いあいだ忘れられていた。何しろ彼がコンピュータを創ろうとしたのは江戸時代のことなのだ。1991年ロンドン科学博物館は、残されていたバベッジの設計図をもとに、バベッジの幻のコンピュータを復元した。いくつかの設計図上の間違いは見つかったものの、バベッジのコンピュータは正しく計算をしたのである。現在ではコンピュータの発想を得て設計した最初の人という評価が固まっている。チャールズ・バベッジはコンピュータの父と呼ばれるようになった。

産業革命の時代

チャールズ・バベッジは1791年イギリスのロンドン近郊で生まれた。18世紀の後半からイギリスに始まった産業革命はヨーロッパ社会を大きく変えようとしていた。バベッジの人生も産業革命とともに進むことになる。科学的好奇心が強く発明に熱中する少年だったバベッジは1810年数学の名門ケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジに入学した。

新興ブルジョアジーの意気

アイザック・ニュートンがあまりにも偉大だったため、その後沈滞していたイギリス数学、特にケンブリッジの数学を立て直すため、若きバベッジは在学中数人の優秀な仲間とともに解析数学学会を設立した。彼らの運動でイギリスもライプニッツ流の微積分学が定着した。彼ら解析学派のこのイギリス学界革新運動は卒業後も続けられ、ケンブリッジ哲学会、王立天文学会などが設立され、イギリス学界に大きな影響を与えた。

正確な数表を作りたい

バベッジは大学を出てから定職につかず、しばらく好きな研究をやっていたが、王立天文学会で天文学上の計算を手伝うようになって、 正確な数表を作るために機械を使えないだろうか という考えを持つようになった。当時、科学研究や建築、 機械設計などに膨大な計算を毎回しないですむように対数表や、三角関数表などの数表が非常に重用されていた。しかし、その数表自体はもともと人が計算したものなので実際には間違いが至る所にあったらしい。産業革命で科学技術の時代になりつつあった当時から、これは困った問題だったのである。

足し算だけで計算する機械

1823年バベッジは英国政府の財政支援を得て、彼が 階差エンジン(ディファレンス・エンジン)と呼ぶ計算機械の制作に取りかかった。この奇妙な名前の機械は有限階差法を使って、四則演算だけでなく、多項式の解を計算することもできるはずだった。この計算機を作る過程で1827年バベッジは独力で新たな対数表を作り発表した。バベッジの対数表は綿密なクロスチェックをしてあり、従来の対数表より格段に正確だったため、その後広くヨーロッパで使われたという。しかし肝心の計算機プロジェクトは、10年の歳月をかけたあと、開発費用の欠乏や、技術者(職人)との軋轢などがあって完成目前で中断された。

政治経済学者として

バベッジは階差エンジンを作る過程で、エンジンの制作に不可欠な精密加工技術とその技術者を捜すため、イギリス全土の工場を視察して回った。彼は知らず知らずに、産業革命の実体をつぶさに検証したことになった。彼は技術の進歩がもたらす労働形態の変化に着目し、分業化による労働生産性の向上を数学的な手法を使って論証した。1832年発表した「機械類と製造業の経済について」は彼を一躍政治経済学者にしてしまった。バベッジのこの本はマルクスも資本論を執筆する際に参考にしたと言われている。また一部では彼の使った数学的手法をもってオペレーションズリサーチの元祖と見る向きもある。

コンピュータの原型:解析エンジン

バベッジは階差エンジンの挫折からしばらくして、1834年新しい発想をとりいれた新型計算機の構想を発表した。それが 解析エンジン(アナリティカル・エンジン)だった。解析エンジン構想は、パンチカードによるプログラミング入力、ストア部と呼ばれる記憶装置、ミル部と呼ばれる演算装置、カード穿孔機、印刷装置などの入出力装置があり、現代のコンピュータの構成とほとんど同じである。特に 演算機能と記憶機能を分離した 点と、 プログラミングという発想を取り入れた 点が今日高く評価されている。またパンチカードを使うという発想は、織物の模様をパンチしたカードで織ることができたジョセフ・ジャッカール発明のジャッカード織機に由来しているらしい。今日のコンピュータと決定的に違うのは、バベッジのエンジンが十進法だったということである。

天才詩人バイロンの娘

このころバベッジは社交界でエイダ・ラブレースという婦人と知り合いになった。エイダは詩人バイロンの娘だったが、意外にも科学好きで数学の素養もあり、バベッジのコンピュータに非常な興味をしめした。後に彼女がまとめたバベッジの講演録への詳細な注釈「バベッジ氏の解析機関の考察」は、解析エンジンの解説として比類無い文書として今日に伝わっている。そこでは、サブルーチンやループ、ジャンプなどのプログラミング概念の成立が彼女の解説の中ではっきり認識されていたのだった。 余談だが米国国防省のプログラミング言語Adaは彼女の名前にちなんでいる。

第二階差エンジンとその後

解析エンジンもまた完成を見なかった。バベッジは今までの研究の集大成として第二階差エンジンを 作り出したのだ。ここまでくると、いままでエンジンが完成しなかったのも外部的要因 だけではなくバベッジ自身のアプローチの仕方にも問題があったのではと思えてくる。 第二階差エンジンも案の定完成をみなかった。チャールズ・バベッジは1871年79歳で死去した。 結局彼のエンジンはどれも最終的な完成を見ず、設計図のみが残されたのだった。 彼の設計図が日の目を見るのは150年の歳月が流れてからである。

参考文献および関連書籍の紹介
「バベッジのコンピュータ」 新戸雅章著 筑摩書房 1996年3月  1100円
1冊の本としてバベッジを紹介したものとしては国内で唯一のものだ。バベッジの伝記風だが、関連のエピソードや事柄も豊富だ。写真も適度に入っていて読みやすい
「コンピュータ史」 小林功武監修 小田徹著 オーム社 1983年1月  2800円
非常に古い本だが、歴史は古くなっても変わらない。パスカルの計算機からENIAC以後まで、簡潔にまとめられている。特にソフトウエアの歴史として章を分けて解説しているのが印象的だ。
「コンピュータを創った天才たち」 ジョエル・シャーキン著 名谷一郎訳 草思社 1989年10月  3200円
著者は科学読み物のライターで、コンピュータの歴史を興味深く伝えてくれている。バベッジも第2章にアルファベット・ファンクション卿として登場する。歴史の好きな人ならけっこう楽しく読めると思う。
「計算機の歴史」 ハーマン・H・ゴールドスタイン著 末包良太・米口肇・犬伏茂之訳 共立出版 1979年1月  4500円
著者のゴールドスタインは、ENIACの開発にたずさわった数学者だ。その後、ノイマンの才能にほれて、彼のアシスタントのような立場にいた。歴史の真っ只中にいた人の証言としての本書は、貴重だが、バベッジの業績も評価されている。
「誰がどうやってコンピュータを創ったのか?」 星野力著 共立出版 1995年7月  2136円
この本は、コンピュータの歴史的事実を原典に則して、現代的な理解を得ようとして書かれている。エイダの解析エンジンの注釈の中身についてふれているのは国内ではこの本だけではないだろうか。
インターネットソースの紹介
バージニア州立大学のバベッジ紹介ページ(英文)(別ウィンドウ)
http://ei.cs.vt.edu/~history/Babbage.html
イギリスのエクセター大学のバベッジ紹介ページ(英文) (別ウィンドウ)
http://info.ex.ac.uk/BABBAGE/welcome.html
移行前のコメント
2002/10/29
「ディファレンスエンジン」という小説があります.面白いのでぜひ読んでみてください.もし蒸気機関コンピュータが動いていたらというあらすじでした.そのほんをよんでバベッジに興味を持ったので

 

 

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