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Sakamura Ken
1951 -
TRONのデザイナー:日本初のコンピュータ・アーキテクト
坂村健は日本の誇る、ほとんどただ一人のコンピュータ・アーキテクトである。(注)彼の設計し、推進しているTRONは日本で唯一ゼロから発想し、作り上げたアーキテクチャで、外国にも広くその存在が認められている。その設計思想の先進性はだんだんに明らかになってきている。特に人間の生活全般に視野を置いた、文化的視点から設計しているため、プロセス・コンピューティングを10数年以上前から重視したものになっている。また、それらをネットワークでつなぐための包括的なインターフェイスも与えている。今後WindowsCEなどと競合する場面も多くなるはずである。がんばってほしい。
(注)もう一人忘れてはならない嶋正利がいる。
坂村健は現在東京大学の理学部情報科学教授で、TRONプロジェクトのディレクターとして活躍中である。1951年東京生まれの彼は、1979年慶応大学工学研究科博士課程を修了して、すぐ東京大学理学部情報科学科の助手になった。実はこの時期に私は彼の講演を会社で聞いたことがある。当時慶応大学の研究室でバロースのB1700という小型汎用機を使っていて、その関係で坂村が来てくれた。バートン・オフィスの様子とか「FORTRANのライブラリをFORTRANで書いてあるのがすばらしい」とか言っていたのを覚えている。彼はそのときは慶応大学の院生で、バイタリティと希望にあふれているようにみえた。きっとそのころから彼の頭の中にはTRONの構想があったのだろう。それから数年後の1984年彼はTRONプロジェクトを起こした。
TRON(The Realtime Operating-systemNucleus)
以下彼の著書から引用したい。彼の苦労が偲ばれるのである。
「コンピュータの全てのパーツをいま一度設計し直そうという一見無謀なことに着手したわけだ。」
「日本で何か新しいことをやるというと,すぐにハードウエアからとなる。まあいろいろ事情もあろうが,使わせるということならソフトウエアの重視ということで,まずオペレーティング・システムをその切り口としてスタートした。しかし,TRONではさらにトータルアーキテクチャを考えている。ハードウエアとソフトウエアを,相互にフィードバックをかけながらデザインしようというものだ。マイクロプロッセッサが与えられてその上にソフトを作るとかいうことではない。同時に設計する。そして,オープン・アーキテクチャ。できあがったものは公開し,アーキテクチャに階層構造を付けることによって,公平な競争が可能となる。」
「やってみてつくづく思うのは,コンピュータのアーキテクチャや オペレーティング・システムを世界に広めようというのは気の遠くなる くらい大変だということである。技術論だけでなく,説得して使ってもらうための説得論も大事だ。プロジェクトを始めたときに比べればずいぶん風向きが変わってきた。世の中ずいぶん変わったと思う。はじめこそ独自OSは無理という声は多かった。日本人が作ったアーキテクチャやオペレーティング・システムで 世界的に流通しているものがないということは残念だけど絶対的な事実である。世界の多くの人たちが使っているアーキテクチャ体系で日本人が考えたものはない。だから,やろうと言っているのではないか。ないからやろうと言うのに,実績論を持ち出す人がいて困った。そもそもそういう人には黒船,島国根性がしみついていて,何か新しいことをやろうとすると,すぐに「だめだ」とか「うまく行きっこない」,「TRONなんて存在しない」とか言う。 同胞のやる仕事を評価したがらず,アメリカ人を今でも偉いと思っている人がいる。(でも実際に偉い場合も多いから頭が痛いが)だいたいそういうことを言う人に限って,自分では何もやっていない。」
| 「コンピュータとどう付き合うか」 | 坂村健 | 光文社 | 1982年10月 | 680円 |
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| たぶん坂村先生が一般向けに書いた最初の本ではないだろうか。あとがきによると、編集者に催促されてやっとできたとのこで、ネタはおのずから当時の坂村助手が興味を持っていた方向にまとめられている。 | ||||
| 「快適生活の技術」 | 坂村健 | 光文社 | 1984年6月 | 650円 |
| これは、上に紹介した本の続編のような内容で、生活のあらゆる局面でコンピュータが浸透してくることを予測した上で、浄水器とか食器洗い機などを題材に坂村流の生活の考え方を説いている。コンピュータの話はあまり出てこないが、坂村がTRONを設計する上で人間生活を一番根底においていたということだと思う。 | ||||
| 「コンピュータ・アーキテクチャ」 | 坂村健 | 共立出版 | 1984年12月 | 1200円 |
| 副題に「電脳建築学」と銘打たれたこの本は、DECのミニコンから、クレイのスーパーコンピュータ、まで解説してもまだあきたらず、最終章は未来のアーキテクチャにあてられている。坂村先生がこの時期から分散環境を念頭にしたアーキテクチャを考えていたのがよくわかる。 |
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| 「TRONからの発想」 | 坂村健 | 岩波書店 | 1987年2月 | 1500円 |
| これは一般向けに初めてTRONを正面から解説した本だ。TRONが必要な理由からはじまって、TRONプロジェクトの内容、TRONのめざす超分散ネットワークの世界までの解説になっている。 | ||||
| 「TRONで変わるコンピュータ」 | 坂村健 | 日本実業出版 | 1987年4月 | 1200円 |
| 1987年刊の3部作の中でこの本はTRONの設計レベルの思想を解説した本になっている。そこで坂村が語っているのは、自動車のようなコンピュータを作りたいというTRONの原点だ。 | ||||
| 「TRONを創る」 | 坂村健 | 共立出版 | 1987年6月 | 1800円 |
| TRONプロジェクトを発足させて3年、この年坂村先生は3冊のTRON関連の本を出版した。これもそのひとつで、RISCの説明などかなり専門的な内容を含み、コンピュータの原点の話とTRONをからませながら、TRONの意義を解説している。 | ||||
| 「新版「電脳都市」」 | 坂村健 | 岩波書店 | 1987年11月 | 2000円 |
| これは坂村先生の原点であるSFを主軸にした、コンピュータのエンサイクロペディアになっている。正直言ってこの本が一番おもしろかった。実は1985年に出版された旧版の方がイラストもふんだんに入って視覚的にもおもしろかったのだが、絶版のようだ。 |
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| 「電脳激動」 | 坂村健 | 日刊工業新聞社 | 1993年7月 | 1900円 |
| これは時事評論といった内容の本だ。1993年時点のコンピュータの話題で坂村がとりあげたのはダウンサイジングとかUNICODE問題などだ。坂村先生は、漢字問題を通して、文化的なもととコンピュータとの係わり合いに非常に関心を持っている。 |
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| 「コンピュータいま何がなぜ?」 | 坂村健 | 読売新聞社 | 1996年10月 | 1400円 |
| この本も時事評論を兼ねてのエッセイ集といったところか。ちょうどインターネットの夜が明けた時期で、TRONの時代が少し近づいたと坂村は感じたと思う。 |
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