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坂村健

Sakamura Ken

1951 -

TRONのデザイナー:日本初のコンピュータ・アーキテクト

1998/08/01 掲載

電脳建築家

坂村健は日本の誇る、ほとんどただ一人のコンピュータ・アーキテクトである。(注)彼の設計し、推進しているTRONは日本で唯一ゼロから発想し、作り上げたアーキテクチャで、外国にも広くその存在が認められている。その設計思想の先進性はだんだんに明らかになってきている。特に人間の生活全般に視野を置いた、文化的視点から設計しているため、プロセス・コンピューティングを10数年以上前から重視したものになっている。また、それらをネットワークでつなぐための包括的なインターフェイスも与えている。今後WindowsCEなどと競合する場面も多くなるはずである。がんばってほしい。

(注)もう一人忘れてはならない嶋正利がいる。

彼はTRONプロジェクトを起こした

坂村健は現在東京大学の理学部情報科学教授で、TRONプロジェクトのディレクターとして活躍中である。1951年東京生まれの彼は、1979年慶応大学工学研究科博士課程を修了して、すぐ東京大学理学部情報科学科の助手になった。実はこの時期に私は彼の講演を会社で聞いたことがある。当時慶応大学の研究室でバロースのB1700という小型汎用機を使っていて、その関係で坂村が来てくれた。バートン・オフィスの様子とか「FORTRANのライブラリをFORTRANで書いてあるのがすばらしい」とか言っていたのを覚えている。彼はそのときは慶応大学の院生で、バイタリティと希望にあふれているようにみえた。きっとそのころから彼の頭の中にはTRONの構想があったのだろう。それから数年後の1984年彼はTRONプロジェクトを起こした。

TRON(The Realtime Operating-systemNucleus)

一見無謀なこと

以下彼の著書から引用したい。彼の苦労が偲ばれるのである。

「コンピュータの全てのパーツをいま一度設計し直そうという一見無謀なことに着手したわけだ。」
「TRONを創る」共立出版より
「日本で何か新しいことをやるというと,すぐにハードウエアからとなる。まあいろいろ事情もあろうが,使わせるということならソフトウエアの重視ということで,まずオペレーティング・システムをその切り口としてスタートした。しかし,TRONではさらにトータルアーキテクチャを考えている。ハードウエアとソフトウエアを,相互にフィードバックをかけながらデザインしようというものだ。マイクロプロッセッサが与えられてその上にソフトを作るとかいうことではない。同時に設計する。そして,オープン・アーキテクチャ。できあがったものは公開し,アーキテクチャに階層構造を付けることによって,公平な競争が可能となる。」
「TRONを創る」共立出版より
「やってみてつくづく思うのは,コンピュータのアーキテクチャや オペレーティング・システムを世界に広めようというのは気の遠くなる くらい大変だということである。技術論だけでなく,説得して使ってもらうための説得論も大事だ。プロジェクトを始めたときに比べればずいぶん風向きが変わってきた。世の中ずいぶん変わったと思う。はじめこそ独自OSは無理という声は多かった。日本人が作ったアーキテクチャやオペレーティング・システムで 世界的に流通しているものがないということは残念だけど絶対的な事実である。世界の多くの人たちが使っているアーキテクチャ体系で日本人が考えたものはない。だから,やろうと言っているのではないか。ないからやろうと言うのに,実績論を持ち出す人がいて困った。そもそもそういう人には黒船,島国根性がしみついていて,何か新しいことをやろうとすると,すぐに「だめだ」とか「うまく行きっこない」,「TRONなんて存在しない」とか言う。 同胞のやる仕事を評価したがらず,アメリカ人を今でも偉いと思っている人がいる。(でも実際に偉い場合も多いから頭が痛いが)だいたいそういうことを言う人に限って,自分では何もやっていない。」
「TRONを創る」共立出版より
参考文献および関連書籍の紹介
「コンピュータとどう付き合うか」 坂村健 光文社 1982年10月  680円
たぶん坂村先生が一般向けに書いた最初の本ではないだろうか。あとがきによると、編集者に催促されてやっとできたとのこで、ネタはおのずから当時の坂村助手が興味を持っていた方向にまとめられている。
「快適生活の技術」 坂村健 光文社 1984年6月  650円
これは、上に紹介した本の続編のような内容で、生活のあらゆる局面でコンピュータが浸透してくることを予測した上で、浄水器とか食器洗い機などを題材に坂村流の生活の考え方を説いている。コンピュータの話はあまり出てこないが、坂村がTRONを設計する上で人間生活を一番根底においていたということだと思う。
「コンピュータ・アーキテクチャ」 坂村健 共立出版 1984年12月  1200円
副題に「電脳建築学」と銘打たれたこの本は、DECのミニコンから、クレイのスーパーコンピュータ、まで解説してもまだあきたらず、最終章は未来のアーキテクチャにあてられている。坂村先生がこの時期から分散環境を念頭にしたアーキテクチャを考えていたのがよくわかる。
「TRONからの発想」 坂村健 岩波書店 1987年2月  1500円
これは一般向けに初めてTRONを正面から解説した本だ。TRONが必要な理由からはじまって、TRONプロジェクトの内容、TRONのめざす超分散ネットワークの世界までの解説になっている。
「TRONで変わるコンピュータ」 坂村健 日本実業出版 1987年4月  1200円
1987年刊の3部作の中でこの本はTRONの設計レベルの思想を解説した本になっている。そこで坂村が語っているのは、自動車のようなコンピュータを作りたいというTRONの原点だ。
「TRONを創る」 坂村健 共立出版 1987年6月  1800円
TRONプロジェクトを発足させて3年、この年坂村先生は3冊のTRON関連の本を出版した。これもそのひとつで、RISCの説明などかなり専門的な内容を含み、コンピュータの原点の話とTRONをからませながら、TRONの意義を解説している。
「新版「電脳都市」」 坂村健 岩波書店 1987年11月  2000円
これは坂村先生の原点であるSFを主軸にした、コンピュータのエンサイクロペディアになっている。正直言ってこの本が一番おもしろかった。実は1985年に出版された旧版の方がイラストもふんだんに入って視覚的にもおもしろかったのだが、絶版のようだ。
「電脳激動」 坂村健 日刊工業新聞社 1993年7月  1900円
これは時事評論といった内容の本だ。1993年時点のコンピュータの話題で坂村がとりあげたのはダウンサイジングとかUNICODE問題などだ。坂村先生は、漢字問題を通して、文化的なもととコンピュータとの係わり合いに非常に関心を持っている。
「コンピュータいま何がなぜ?」 坂村健 読売新聞社 1996年10月  1400円
この本も時事評論を兼ねてのエッセイ集といったところか。ちょうどインターネットの夜が明けた時期で、TRONの時代が少し近づいたと坂村は感じたと思う。
インターネットソースの紹介
坂村研究室入り口(別ウィンドウ)
http://www.sakamura-lab.org/
TRONWEB(英文)(別ウィンドウ)
http://tronweb.super-nova.co.jp/homepage.html
移行前のコメント
2006/12/22
2006/12/22現在超漢字4を利用しています自作パソコンにインストールして利用いますインテル845です、865にインストルするとインターネットができないのが残念です
2006/6/29
現在私はwindows professionalを使用しております。坂村先生のトロンによる環境をつくり、統合的な環境設定によってpcを活用したいと考えております。具体的に設定方法を教えてください。
トロンというosをpcで体験してこそ実感が味わえるとおもいます。 一般の素人から
2006/5/16
OS開発を夢見る大学生です。いつかTRONの夢を引き継ぎたいですね。
市場がWindowsにこのまま占拠されていて良いわけがありません。
2004/12/08
ダイエイ・フォークス球団をソフトバンク孫正義氏が買収するとか。 彼は、文部省が折角OSにTORON搭載パソコンを小中学校などへの配布を決めていたのに、ソニー盛田昭夫氏や通産省高官を抱きこんで、マイクロソフトを強制採用させた張本人ではないのか!? いまや産業用では B-TORON が世界標準になりつつあるとか。
2003/12/27
TRONに脅威を感じ潰しに掛かって来たMSの先見性は凄いと思います。
あの頃日本国内でTRONの先進性を理解できていた方は非常に少なかったんでしょう。そうでなければ国を挙げて開発に協力しなければならなかったはずです。利権がらみの政治家が多い国ですから、大企業の言う事には加担するのですが・・・
気が付けば知らず知らずのうちに、身の回り機材はTRONで動いていて、その浸透率もう太刀打ちができないことにMSは気づいたのでしょう、でなければ今更頭を下げてこないですから。MSサイドから提携話が出た情報を聞いて、ざまあ見ろと思いました。存在を感じさせないのがOSの本当の姿では無いのかと言うのが私の考え方です。坂村先生の御健闘を期待しております。
2003/12/14
坂村先生が理学部情報科学科にいる時代に講義を受講していたが、話術がとても巧みです。数件出版から出版されたばかりの「大人のための「情報」教科書」でも、その話術が存分に発揮されております。
2003/12/12
私は長年に渡り独学でソフト開発の勉強をし、関連会社を設立し、細々と世渡りして来た老人です。最初はNECの9800系で始まりましたが、世の流れに押され止むを得ずWINDOWSに切り替えMSのワンマン経営に泣かされています。早期トロンの実用化社会を待っております。
2003/09/25
私は東京工業大学の情報工学科に所属する学生です。実は私も含め、多くの情報系学生はトロンの名前を知っていてはいてもそれが今の生活を大きく支えていることを知りませんでした。今圧倒的なシェアを誇るwindowsには不満がありながら、数多くのソフトをサポートしているという現状からしょうがなく使っています。しかし、できることならOSをよりよいものでPCを使用したい!トロンにはその可能性があります。私は良いOSならどこの国のメーカーが開発するということにこだわりませんが、現在のほぼ一社独占という構造には警鐘を鳴らす必要があると思います。トロンはその役割を果たすどころか、とってかわる性能を有していると信じじています。日本の、そして世界の未来を輝かせるOSとして、先生に敬意を表するとともに、PCの基本OSとして皆が使ってる日を夢みています。
2003/09/10
総合学習で、未来のコンピュータについて調べています。そんな時、プロジェクトXでTRONについて見ました。改めて、TRONのすごさを実感しました。自分のパソコンでTRONが動く日を楽しみにしています。
2003/04/28
私は、ユーザ系企業のプログラマーをやっております40才になる会社員です。「TRON」は、9年ほど前、ホテルの客室を管理するシステムで、「ITRON」を使わせてもらった経験があります。その時は、ただOSが「TRON」というだけで、不運なOSであることなど知る由もありませんでした。
 最近、「ユビキタスコンピューティング」あるいは、「ユビキタスネットワーキング」という言葉が耳に入って来るようになり、偶然、坂村先生の書いた「ユビキタス・コンピュータ革命」と言う本を読んでから、「TRON」を作った人であることを知り、同時に先生を尊敬するようになりました。約20年も前から、OSを水や、電気のように社会基盤の一つとして捉え、一企業がその技術を独占するのではなく、自ら作った「TRON」仕様を惜しげもなく公開する。こんな崇高な考え持った人が、日本にもいるんだな〜。と感激しました。それ以来、先生の講演会に4度ほど参加させていただいています。先生が20年前から、力を入れている「ユビキタスコンピューティング」=「どこでもコンピュータ」は、世の中のインフラ基盤を劇的に変える可能性(もちろん良い方向に。。)を秘めていることも最近分ってきました。
 20年前に潰されかけた「TRON」が、実は社会基盤として携帯電話、ファックス、車、電子レンジ、等などに脈々と生きつづけ、浸透し、今回ユビキタス社会を実現するキーワード=電子タグにTRON技術が使われそうな状況になりつつあります。日本人の作ったこの素晴らしい技術を、前回のような「不遇」にさせないよう、私達日本人みんなが、見守っていく必要があると強く思います。
2003/04/21
プロジェクトXに坂村さんが登場しましたね、これを機会にTRONがWINDOWS並にメジャーになってくれる事を祈るばかりです。TRONのキーボードは今でも使いやすいと一部で人気がありますしね。
2003/04/17
2000・12・17の投書に「一部にアメリカの圧力で、、、」とありますが、最近のNHKのプロジェクトXでは、スーパー301発動の対象になりかけ、日本政府の指示で教育用パソコンへのトロン採用や開発をとめた経緯が紹介されてました。こんな大事なことが、当時何故積極的に分かりやすく報道されなかったのでしょうか?大変疑問です。今頃になって、、、という思いですが。
2003/04/17
2000・12・17の投書に「一部にアメリカの圧力で、、、」とありますが、最近のNHKのプロジェクトXでは、スーパー301発動の対象になりかけ、日本政府の指示で教育用パソコンへのトロン採用や開発をとめた経緯が紹介されてました。こんな大事なことが、当時何故積極的に分かりやすく報道されなかったのでしょうか?大変疑問です。今頃になって、、、という思いですが。
2002/12/17
毎日新聞である記者が「坂村氏をただの変人だと思っていた。」と書いていました。TROは大変独創的なソフトと言われていますが、まともな記者ならTRONが優れているのは当時からわかっていたはずで、ひどい記事だと思います。
一部では、TRONはアメリカの圧力で普及が難しくなったといわれています。微妙なところですが、大事なところなので、真相を知りたいです。最後に、彼の「痛快コンピューター学」は素晴らしい本です。コンピューターに興味を持った初心者には最適だと思います。
2002/11/17
日本で出来たOSトロンに、大いに期待していた老人です、いつのまにか、トロンと言ふ名前が消えてしまいました、残念に思っていた一人ですが、昨夕十五日(NHK BS1)で坂村先生の、元気な経過説明とトロンに対する情熱を間近に聞いて、頑張って頂きたいと願っている一人です。
軽快に動かない(WINDOWS)に不満を感じながら、仕方なく使っている、一人として、生きている間にPCに基本OSとして搭載されることを夢見ながら、先生の今後のご活躍をお祈りしています。
電卓時代の、嶋正利先生のご活躍は、日本人の誇りとして感謝しています。
2002/02/18
坂村先生が市村学術賞特別賞おうび武田賞を受賞しましたね。
2001/01/24
坂村さんのトロンは、「超漢字3」として発表されますが、素晴らしいソフトも知名度の低さが残念です。
もっとメディアがトロンについて報道してくれたらと思います。

 

 

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