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ポール・モッカペトリス

Paul V. Mockapetris

unknown -

インターネットを支えるDNSの設計者

2000/03/27 掲載

インターネットの歴史とDNS

DNS(Domain Name System) はインターネット上で、相手を特定するための仕組みである。つまり、chienowa.co.jpなどのドメイン名(注1)をIPアドレス(注2)に変換する仕掛けだ(IPアドレスからドメイン名を探す逆の仕組みも含まれる)。モッカペトリスが考えたこの仕組みが出現するのが1983年で、ちょうど ヴィント・サーフ等のTCP/IPがインターネットに正式に採用された年である。この当時ノードの数は200程度だったらしいが、1983年は現在の 大規模なインターネットを可能にする技術的な基盤が整った年 ということができるのではないか。ともあれ、1969年にカリフォルニア大学など4つのノードがむすばれたのを発端にしたインターネットは、1989年から93年にかけての ティム・バーナーズ=リー のWWW仕様(HTML、HTTP、URL)発表を経て、1993年 マーク・アンドリーセン のMosaicが登場するにおよんで、一般世界に広がることとなった。

おぼろげな略歴

モッカペトリスの略歴はほとんどつかめなかった。ポール・モッカペトリスはXX年にXX国で生まれた、という決まり文句を書きたいのだがそれもかなわないのが残念だ。モッカペトリスは南カリフォルニア大学に学び、同大学の情報科学研究所(ISI)に入り、所長まで勤めたようだ。また初期のARPAnetプロジェクトに、たぶん学生ボランティアとして参加した。IETF(Internet Engineering Task Force)の委員を長らくやっており、 Ipv6(インターネット・プロトコルVersion6)の制定にも参加したらしい。一時期ビジネスにも首を突っ込み@Homeの取締役をやったりしたらしい。いずれも状況証拠的な情報で確証は得られなかった。

DNS以前

インターネットの始まりの頃は接続ノードの数もたかがしれていたので、 HostsというIPアドレスとホスト名の対比表ファイルが使われていた。そこにはインターネットに接続されているの全てのコンピュータが登録されており、新たなノードが増えると、メールで連絡を受けスタンフォード大学のサーバーに登録していた。他のコンピュータは適時それをダウンロードして使っていたわけだ。(ちなみにHostsは現在でも小規模のネットワークにおける名前解決の方法として用いられている)

しかし、この方法はノードの数が多くなるにつれ、保守作業が非現実的なほど大変なものになっていった。また特に深刻な影響があると思われていたのは電子メールの配信システムだった。これがうまくいかなくなると、インターネットのコミュニケーション機能が大打撃をこうむることになるはずだった。

DNSが生まれるまで

このような状況を背景に1980年代の初頭からHostsに変わる名前解決の仕組みが模索されだした。1981年ミルズによる論文(RFC799)(注3)が出ると、1982年にゾーシン・スーとジョン・ポステルの共著(RFC819)、スー単独のRFC830などが提出され、色々な方法が議論されたようだ。そういった議論の集大成として1983年にモッカペトリスのRFC882、RFC883が発表されDNSの原型ができあがった。モッカペトリスは1987年に、その後の修正などを反映した決定版RFC1034、 RFC1035を出している。

階層型のドメイン

モッカペトリスが考えた仕組みは、IPアドレスとホスト名の対比表ファイルの管理をツリー状に階層化して、管理する範囲とサーバーを限定してしまうということだった。DNSの仕組みによると、インターネットに接続しているコンピュータ(ノード)はすべて、ルートサーバーと呼ばれるおおもとのドメインを管理するサーバーのIPアドレスを知っている。というか、それさえ知っていればよい。現在世界で13台のルートサーバーがあり、日本にも 村井純氏 率いるWIDEプロジェクトが管理するサーバーが13台のうちの1台になっている。このルートサーバーは次の階層のドメインを管理するサーバーのIPアドレスを知っている。次の階層とはcomやjp,uk,eduなどだ。余談だがComドメイン名の付け親はやはりモッカペトリスらしい。1983年のことだ。次にComサーバーはComの下の階層のIPアドレスを知っている、といった具合にイモヅル式にたどっていけばいいようになっている。こうすれば、ノードが追加されても、そのノードを管理するサーバーだけテーブルを変更すればいいわけだ。

インターネットを支える技術

モッカペトリスを含めインターネットの初期の頃に貢献してくれた人たちは、今日のように世界中の人々がインターネットを利用するなどとは想像すらしなかった。そもそもコンピュータ・ネットワークなどごく限られた人々しか知らなかったのだ。今日のこの興隆の原因は、インターネットが誰でも参加できるしきいの低さを持っていたのが一番だが、 背後にインターネットを支える確かな技術があったのも忘れられない。モッカペトリスのDNSもその一つだ。

(注1)ドメイン名(Domain Name)

"ドメイン"は元々「領土」を示す語で、範囲を規定する性格の言葉だ。DNSで使われるドメインもやはり言葉の性格は同じで、"jpドメイン"という場合jpがつくドメイン名すべての集合を意味する。次の階層が"co.jpドメイン"で、その下が"chienowa.co.jp ドメイン"というわけだ。最後の"www"はホスト名になり、具体的な1つのコンピュータを指す(正確には1つのノード)。

(注2)IPアドレス

インターネット・プロトコルにおけるパケットの送り先を指定するための32ビットのアドレスで、当然ながら全インターネットでユニークな値が設定される。このため、アドレスの採番は各ドメインごとに集中管理されており、jpドメイン(日本)ではJPNICという機関がそれを行っている。近年インターネットのノードが爆発的に増えて、アドレス空間がいっぱいになりつつあるので、インターネット・プロトコルの次期バージョンIPv6 では128ビットにアドレス空間が拡張される予定になっている。

(注3)RFC(Request for Comments)

RFCの1番はARPAnetの功労者の一人であるスティーブ・クロッカーが1969年に書いている。これは当時のネットワーク・ワーキング・グループの研究成果を発表する方法として考えられたものだそうで、"この論文にコメントをお願いします"といったへりくだった形式になっているのは、彼らの活動が政府機関にオーソライズされていなかったためらしい。しかし、RFCは非常に有効な知識共有の方法だったので、ネットワークの歴史に大きな役割をはたしている。

参考文献および関連書籍の紹介
RFC882:DOMAIN NAMES - CONCEPTS and FACILITIES Paul Mockapetris著 1983年11月  0円
RFC883:DOMAIN NAMES - IMPLIMENTATION and SPECIFICATION Paul Mockapetris著 1983年11月  0円
RFC973:Domain System Changes and Observations Paul Mockapetris著 1986年1月  0円
RFC1034:DOMAIN NAMES - CONCEPTS and FACILITIES Paul Mockapetris著 1987年11月  0円
RFC1034:DOMAIN NAMES - IMPLIMENTATION and SPECIFICATION Paul Mockapetris著 1987年11月  0円

 

 

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