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ケン・トンプソン

Ken Thompson

1943 -

UNIXの原作者

1998/10/19 掲載

MULTICSプロジェクトからの撤退

1968年から69年にかけてベル研究所では、MULTICSプロジェクトからの撤退を考えていた。このシステムはあまりに巨大になりすぎて莫大な経費がかかっていた。しかし、このプロジェクトに深く係わっていたケン・トンプソン等のグループはMULTICSが曲がりなりにも提供してくれていた便利な対話型のユーザーインターフェイスを失いたくなかった。彼らはベル研のこのプロジェクトからの撤退が決まると、かわりのシステムを探し始めた。

自分たち用のシステム(OS)

ケン・トンプソンはできたら自分たちで、自分たち用のシステム(OS)を創ってしまおうと考えて、 ファイル・システムの構想を温めていた。彼はMULTICS上で、 彼のファイルシステムを詳細にシュミレートする仕掛けをつくったり、 GEのマシンに簡単なオペレーティングシステムを書いたりしていたが、 そうした環境もすぐに無くなってしまい、構想は一時途絶えていた。

1回遊ぶごとに75ドル

トンプソンはまた一方で「宇宙旅行」というコンピュータ・ゲームを創っていた。これは太陽系の惑星の運行をシュミレートして、プレーヤーがその間を宇宙船で移動し、惑星に着陸させるというものだったらしい。これも当初MULTICS上で書かれたが、TSSで1回遊ぶごとに75ドルかかり、仕方がないのでトンプソンは研究所のすみにころがっていた旧式のPDP-7にそのゲームを移植した。

UNIX

こうした経験から、頓挫していた彼らのファイルシステムもそのPDP-7に移植され、彼らのグループは少しずつOSとしての体裁を整えていった。こうしたことが1969年、1970年にかけて行われていた。彼らのOSはすぐ後にUNIXと呼ばれるようになったが、入出力のリダイレクションなどMULTICSの良い面を受け継いでいた。なぜMULTICSはうまくいかず、UNIXはうまく行ったのだろうか。その答えを彼らが語っている箇所がある。

「私が思うに、その理由はMULTICSプロジェクトがあまりに大きすぎたからであろう。例えば、入出力システムの実現はマーレー・ヒルのベル研が担当し、シェルの実現はMITが担当しているといった具合だった。我々にとってはシェルに変更を加えることなど思いもよらなかった(それは他人のプログラムだったのである)。また逆に、シェルを扱っている側では、 iocallが多少ぎこちなくかんじてはいても便利であることに気づいていないようだった。 ….UNIX入出力システムとシェルの場合は、ともにThompson1人の管理下にあったため、良い考えが浮かぶと、それを実現するのに1時間程度しかかからなかった」
「UNIX原典」AT&Tベル研究所編より

スーパーコンピュータのセイモア・クレイも人間は少なければ少ないほどよい。理想は1人である。と言っている。 UNIXはケン・トンプソン一人が構想したファイルシステムからスタートし、ごく少数のメンバーでカーネルがつくられたため、シンプルで堅牢なOSとなった。

一気に世界中の大学などに広まった

UNIXはその後1970年にPDP-11に移植され、ベル研の特許部門がその公式ユーザー第一号となった。1972年にパイプ機能が追加されたバージョン2がリリースされた。そして、大きな課題がまだひとつ残っていた。UNIX自身を高級言語で書き直すという課題だ。トンプソン等はPL/Iで書かれたMULTICSの経験を生かして、何とかアセンブラーの世界を抜け出したかった。このときUNIXは依然としてアセンブラーで書かれていたので、テストや移植に膨大な労力が必要だったのだ。この課題は主にデニス・リッチーによって定式化されたC言語を使って、1974年にUNIXは書き換えられた。これによってUNIXは移植性に優れた(ポータブルな)OSになり、同じ年に一般に公表されたことで、一気に世界中の大学、研究機関などに広まったのだった。

1983年にケン・トンプソンはUNIXの創始者としてデニス・リッチーと共 にチューリング賞を授与されている。

二人の力:UNIXとC言語の誕生物語のページもご覧ください

参考文献および関連書籍の紹介
「UNIX原典」 AT&Tベル研究所編 パーソナルメディア 1986年11月  3605円
副題 AT&Tベル研のUNIX開発者自身によるUNIX公式解説書
「Life with UNIX」 Don Libs & Sandy Ressler アスキー出版局 1990年7月  3000円
インターネットソースの紹介
ベル研究所のケン・トンプソン紹介ページ(別ウィンドウ)
http://plan9.bell-labs.com/who/ken/

 

 

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