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二人の力:HPウエイと厚い友情

ビル・ヒューレットとデビッド・パッカードのケース
ヒューレット・パッカードの創業

1998/09/07 掲載

不思議な会社

2年前1996年にデビッド・パッカードが83歳で亡くなったとき、ヘンリー・キッシンジャーなど各界の著名人から多くの弔辞がとどいて、巨人の死として報道された。アメリカでは、パロアルトにあるビルとデビッドのガレージはシリコンバレーの発祥の地 として記憶されている。彼らの起こしたヒューレット・パッカードは不思議な会社である。栄枯盛衰の激しいコンピュータの世界で、この会社だけ悪い噂を聞いたことがないのである。約60年の間安定した成長を続けている彼らの経営ノウハウはHPウエイということばでよく知られている。この項では、その辺の事情にフォーカスを当てて見てみたい。

1999年8月にヒューレット・パッカードの社長にカーリー・フィオリーナ氏(女性)が就任した。HPのような伝統ある大企業で女性のトップが誕生したというのを、他には聞いたことがない。彼女は役員会の満場一致で推挙されたということである。いかにもHPらしい話だ。

2001年1月12日にビル・ヒューレット氏がパロアルトの自宅で亡くなった。87歳。ビルとデーブの物語は永く後世に伝えられ、その精神は生き続けるはずだ。

希有のケース

二人の写真を見ると、デビッドは長身でビルはそれに比べると小柄で、顔立ちもいかにも対照的といった感じがするが、趣味や人生観は一致するところが多かったらしく、スタンフォード大学時代から変わらぬ厚い友情を保っていたらしい。会社の運営も、よくありがちな一方が営業で一方が技術者といったことではなく、二人ともエンジニアで且つ経営者だった希有のケースである。彼らは会社を設立するときに6つの方針を掲げた。それらが発展し、HPウエイと呼ばれるようになった。

HPウエイ

HPウエイは目標管理、オープン・ドア・ポリシーなど標語的な言葉でくくることもできるが、一口に言ってしまうと従業員の尊厳を認める経営だろうか。結果として、質の高い従業員を確保し、従業員をやる気にさせているのである。デビッド・パッカードは彼の自伝「The HP Way」の中で従業員との関係を「共有」という言葉で説明している。

「HPの社員に関する基本方針は「共有」という考え方である。目標を設定し、達成する責任の共有、従業員持ち株制度による企業所有権の共有、利益の共有、個人として、また仕事の面で成長する機会の共有、さらに、事業の下降期に生じる負担の共有も含まれる」
「The HP Way」より

負担の共有はなかなか難しいが、1990年代にやったらしい

「我々は従業員の10パーセントをレイオフしなければならない状況に直面した。しかし、レイオフではなく、別の方法をとった。2週間9日勤務に移行したのである。これで勤務時間が10パーセント減ったため、給与も10パーセント引き下げられた。これは、米国のほとんどの工場はもちろん、幹部や本部スタッフ全員にも適用された」
「The HP Way」より

利益の共有、成長する機会の共有

「戦前から、従業員全員に報奨金制度を実施していた。要するに、生産高が一定の水準を越えた場合には基本給に応じて全員に賞与を支払うものだった」
「The HP Way」より
「奨学金制度を拡大して優等教育連携制度を創設した。これは条件を満たしたエンジニアがスタンフォードで上級の学位を取得するための制度である。HPで働いて的確と認められると、給与全額の支給を受けながら大学院にかよえると約束し、全米から優秀な学卒者を集めることができた」
「The HP Way」より
「高額医療費保険制度を設け、従業員とその家族を守ることにした。1940年代後半には、このような保険はまだほとんど知られていなかった」
「The HP Way」より

初めてのフレックスタイム

「フレックス勤務を採用したのは、米国企業ではHPが初めてである。フレックスタイムは人への尊重と信頼の本質であると考えている。つまり従業員には忙しい私生活があることを認識し、かれらが管理者や作業グループのメンバーと相談して、自分だけでなく周囲の都合にも配慮したスケジュールを立てることを信じるのである」
「The HP Way」より

目標管理(MBO Management By Objective)

会社の経営方針としては目標管理がある。これは今ではどこの会社でもやっているようなことだと思うと大違いで、従業員の評価システムとしての目標管理はどこでもやっているが、パッカードの言う目標管理は従業員への権限譲渡という意味に近い。

「HPの成功に最も寄与した経営方針は「目標管理(MBO Management By Objective)」である。人々には、各々の担当領域にとって最適と思われる方法で、目標に向けて努力する自由が与えられる。これは分権化の理念であり、自由企業の本質である」
「The HP Way」より

オープン・ドア・ポリシー

権限委譲とともに風通しのいい組織をめざして、オープン・ドア・ポリシーとよばれるオフィススタイルを採用した。

「HPでは、CEOも含めて全員が間仕切りの少ないドアのないオフィスで仕事をしている。また、気楽にファーストネームで呼び合う」
「The HP Way」より

シリコンバレー発祥の地

上にあげた数々の方針は現代的な経営の手本となっている。こうした先進的なポリシーをヒューレットとパッカードが50年以上前に経営者として考える感性を持っていたことに驚かされる。彼らのこうしたオープンな感性はシリコンバレーの企業家たちに受け継がれていったのである。

参考文献および関連書籍の紹介
「The HP Way」 デビッド・パッカード 日経BP出版センター 1995年10月  1600円
副題:シリコンバレーの夜明け

 

 

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